歩く猫

日々飽和をして溢れてしまう感情を残すために書いています。

朝井リョウ『正欲』を読んで

悩ましい。

 

正直どんな言葉で感想を書いたらいいのか分からない。500ページくらいのそれなりに長い小説なのだが、文章の一つ一つが身体に刻み込まれていくようで、読んでも読んでも飽きることなく終わりのページを迎えた。

 

『みんな違ってみんな良い』

『多様性は素晴らしい』

などという言葉は、

使い勝手の良い言葉として、あたかも自分は理解力のある人間ですよと示すために使いがちだ。

 

しかしその『多様性による違い』はどこまでの違いなら許されるのか?

犯罪と勘違いされるような指向の違いを『良いこと』として本当に認めてくれるのか?

多様性といいながら、許容される多様性は多数派が寛容できる範囲に限る多様性ではないだろうか?

 

近年、ポリティカルコレクトネスという言葉をよく聞く。しかし、この本を読むとコレクトネス(正しさ)は誰にとっての誰のための正しさなのだろうかと思わされる。

 

この本を読んで色々か考えが浮かんできたものの、具体的にどう多様性に向き合えば良いかという答えは出ない。

 

ただ『3分の2を2回続けて引く確率が6分の4となるように、多数派であり続けることは少数派である』ことは忘れないように生きていこうと思えた。